【残留応力とアニール処理】意味や役割をわかりやすく説明

材料・処理の知識

【残留応力とアニール処理】意味や役割をわかりやすく説明

「アニール処理」という言葉をご存じでしょうか?

アニール処理(別名:アニーリング、焼きなまし、焼鈍)は、外力や薬品接触による部品の破損や変形を防ぐことを目的とした処理です。

今回はそんなアニール処理についてわかりやすく説明していきたいと思います。

加工品には残留応力が存在する

残留応力とは「物体内に残っている応力」のこと

アニール処理を説明する上で、残留応力の存在は避けては通れないでしょう。

物体を圧縮・変形・加熱などの加工をすると、物体内部には応力が発生します。
物体への負荷を止めると応力は開放されますが、すべての応力が開放されるわけではありません。

その物体内に残された応力のことを残留応力と呼びます。

特に成形品を作る際は、金型に高圧力で押し込められた部材を冷却し、取り外します。
そのため成型品には残留応力が残りやすいので、アニール処理による残留応力の除去が必要となります。

アニール処理により残留応力を除去する

「応力」は英語で「ストレス(stress)」と言います。
ストレスという言葉からわかるように、応力は物体に対して悪影響を及ぼします。

具体的には以下のような悪影響が考えられます。

  • 外力に対する強度の低下
  • 薬品に対する耐久性の低下

製品の設計をすると、外力に対する強度薬品に対する耐久性を仕様として設定すると思います。

しかし、残留応力によって物体内にストレスが加わった状態だと、本来耐えられるはずの外力が加わったり、本来耐えられるはずの薬品に接触した際に破損や変形が生じてしまいます。

すなわち、製品品質が著しく下がってしまうのです。

また、残留応力が残っている状態で切削などの追加工をすると、部品が変形してしまい、狙った寸法が出しづらい」という問題もあります。

そのため、アニール処理によって残留応力を開放して、製品の物理的安定性と化学的安定性を向上させなくてはなりません。

アニール処理の処理方法

アニール処理は、別名で焼きなましと呼ばれるように、熱処理の一種です。

恒温槽などに入れて、一定温度で一定時間加熱した後、徐々に常温まで温度を下げます。
これによって残留応力を除去します。

処理方法は単純ですが、成型品などを作る際には非常に重要な処理です。

アニール処理がいらない場合もある?(圧縮残留応力と引張残留応力)

これまでは「残留応力による悪影響」「残留応力を除去するためのアニール処理」と説明してきましたが、実は残留応力は必ずしも悪いものというわけではありません。

残留応力は引張残留応力圧縮残留応力に分けられます。

引張残留応力は前述のような物体の強度低下に繋がります。
その名の通り物体を外側に引っ張るような力が加わっているため、外力などによって破壊されやすいのです。

一方、圧縮残留応力は物体を圧縮する方向に加わる力であるため、物体の強度向上の効果があります。

そのため、あえて圧縮残留応力を残した加工方法を実施する場合もあります。

おまけ:残留応力の測定方法

アニール処理が何なのか知ったところで、設計している製品にアニール処理が必要か否か、どのように判断すれば良いでしょうか。

アニール処理前の段階で残留応力が完全に開放されている、または許容値以下であればアニール処理はいりません。

その判断を下すためには、まず残留応力を測定できなくてはなりません。

実は残留応力の測定方法は多数あり、形状や材料によって最適な測定方法は異なります。

代表例として、今回は「X線回析法」と「薬液浸漬法」の2種類をご紹介します。

X線回析法

金属やセラミックなどの多結晶体は、応力が加わると、力の方向に伸び、力と直角方向に縮む性質を持っています。

この性質による結晶格子間距離の変化をX線で測定することで、残留応力の大きさがわかるのです。
参考:X線による残留応力測定

X線回析法はX線の照射により測定するため、非破壊試験(測定対象を破壊しない試験)として有用です。

測定対象を壊したくない場合にはX線回析法がおすすめです。

X線回析法による残留応力測定を依頼したいなら、
X線残留応力測定センターなどに依頼することができます。

薬液浸漬法

薬液浸漬法は樹脂材全般に使える試験方法です。

物体の耐薬品性に着目した試験方法で、物体を薬品に浸漬させます。

残留応力が残っていると、物体にクラック(亀裂)が生じます。
物体の材質ごとに「何の溶液につけてクラックが生じると残留応力がどれくらい残っているか」が決まっているため、残留応力の大きさがわかるのです。

X線回析法と比較すると、破壊試験(クラックが発生するため)であるという点が異なります。

樹脂材部品の試作段階など、部品が破損しても問題ない場合にはおすすめの測定方法です。

薬液浸漬法による残留応力測定を依頼したいなら、
化学研究評価機構などに依頼することができます。

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